suketani’s diary

個人的メモ用、どこも代表していない

前澤効果:1億円バラマキ企画はZOZOの株価に影響を与えたのか(調査編)

前澤友作氏の1億円バラマキ企画は結構考察に値する題材だと思うのです。

株主にとっては外生的なニュースであり、かつもし株価が動くとしてどのような経路で株価が動いたのかを考えるとなかなか複雑な現象だったのでは?


2019年1月5日、ZOZOのCEO前澤友作氏がtwitter上で100万円を100人(総額1億円)に配る企画を発表した。

f:id:suketani:20190110025658j:plain
2019_Maezawa


さて、これでZOZOの株価はどのように動いたのか?まずZOZOのリターンと日経平均のリターンをプロットしたものが下の通り。
なお、ここでリターンは当日の終値から前日の終値を差し引いて、それを前日の終値でデフレ―としたものを用いている。
使用している終値は配当調整済みの株価である。

f:id:suketani:20190110030407j:plain
fig1
実線がZOZOのリターンで、破線が日経平均のリターン。これを見ると、上のツイート直後である1月7日の株価が大きく上がっていることがわかる。
具体的には、日経平均のリターンが2.44%であるのに対して、ZOZOのリターンが8.63%であった。


しかしこれだけでは、ZOZOがどれだけ「市場に勝っている」のかが不明瞭である。そこで、ZOZOのリターンから日経平均のリターンを差し引いた、
市場調整済みのリターンを計算する。CAPM等で計算することも考えたが面倒なので簡便法で。
なお、ZOZOはリスクの高い証券であると思われるので、正のリターンの日には市場調整済みリターンが上方に、負のリターンの日には下方にバイアスがかかってる可能性が高いことを配慮したい。

f:id:suketani:20190110030427j:plain
fig2
これを見てもやはり1月7日に株主が儲かっていることがわかる。市場に6.20%勝っている。

この記事を書いている時点では1月9日までの株価までしか手に入らないが、7日から9日までの累計異常リターン(CAR)を計算してみよう。
これは、1月4日の終値でZOZO株を購入し、1月9日の終値で同株を売却した場合の市場調整済みリターンである。
CARは11.9%である。簡便法を用いていることから上方にバイアスがかかっているにしても、かなり大きなリターンを獲得できることがわかる。

*****夜間リターンを用いた調査

前澤氏は休日中にツイートしているため、1月4日にZOZO株を保有していなければこのリターンを得ることはできない。
休日間の取引が停止している間の取引注文を受けて、1月7日に始値が付く。前日の終値から当日の始値の間のリターンを夜間リターン(overnight return)と呼ぶ。

今回のケースでも、このツイートによって株価が上昇すると考えた株主は、1月7日の取引が始まる前に既に注文をしているはずだ。
1月4日の終値から7日の始値までの夜間リターンは、ZOZOと日経平均でそれぞれ4.50%と1.96%である。かなりの買い注文があったと考えられる。

もし私が上のツイートを見てから週末に買い注文をして、初値で株式を購入できたとする。すると、1月7日のリターンは上で計算したほど大きくはなく、3.95%である(1月7日終値と同日始値の差)。

1月7日の初値で株式を購入し、1月9日の終値で売却できた想定でCARを計算すると、9.21%である。
夜間リターンを考慮したとしても、前澤氏のツイートは株主価値を大きく押し上げたことになる。

次回は、「なぜ」株価が上がったのかを考察していきたい。